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vol.1
EQで人と組織を元気に

技術革新の進む激変の時代を襲った新型コロナウィルス。事業経営、組織運営で日々頭を抱えておられる方も多いことと思います。
このような環境の変化を察知・対応し、自らを奮い立たせて、周囲を動機づける力、EQ(Emotional Intelligence Quotient)をご存じでしょうか?
EQは、日本では「こころの知能指数」とも言われ、1990年代からビジネス界、教育界を中心に一大ムーブメントを起こした概念です。学問的には情動知能EI(Emotional Intelligence)として研究され、開発可能なビジネスに不可欠な能力として、心理学の領域では驚くほど一般の人たちの関心を高めました。(出典:『エモーショナル・インテリジェンス』ジョンD.メイヤー他編,ナカニシヤ出版)
本稿では、このEQをご紹介しながら、社員一人ひとりのモチベーションを高め、組織が元気になるヒントをお届けしたいと思います。

1.EQとは

EQは1990年にピーター・サロベイとジョンDメイヤーによって発表され、日本では1996年に出版された『EQこころの知能指数』(ダニエル・ゴールマン著,講談社)によって認知されました。世界的には、TIME誌が「人生で成功するために必要なのはIQではなく、EQだ」と、IQと対比してEQという名称を用いてビジネスや人生での成功要因として紹介されたことから、EIの概念よりも、EQという名称で大きく広がっていきました。
VUCAな世界が広がり、何が正解でこの先どうなるのか不透明な近年では、Google社が社員のEQ開発のためにマインドフルネス・プログラムを導入するなど(『サーチ・インサイド・ユアセルフ』,チャディー・メン・タン)、リーダーシップやパフォーマンスの向上、心身の健康増進のための重要な能力として、再びEQへの注目が高まっています。(『組織科学』vol.50,2016)

2.人と組織の課題を解決するために大切なこと

これまでEQについて問い合わせやご相談を受けてきた側からしますと、以前はIQだけでは解決できない問題が、EQだったら解決できるのではないかという期待があまりにも大きかったように思います。EQはIQと異なり開発可能な伸ばせる能力ですので、期待が膨らむのはわからなくはないのですが…。その頃からすると、近年では、より具体的で切実な課題解決のご相談が増えてきたように感じています。
例えば、「パワハラ傾向のある管理職に感情コントロールを身につけさせたい」「上意下達型から支援型へとマネジメント変革したい」などリーダー・管理職の素養に関するものや、オープンでフラットな関係にしたいという社員同士の関係に関するもの、そして、社内に信頼関係を醸成しオープンで風通しの良い組織にしたいという組織風土に関するものなどです。しかし、このような課題をスイッチポンですぐに解決できる即効性のあるノウハウはありません。課題のある状態が続いているのは、それだけの理由が存在し、絡み合っているからです。
ただ、共通して言えることがあります。まずは今の組織の状況、今の自分に気づくことがスタートだということです。

図表1は、EQを測るアセスメントであるEQI(EQ行動特性検査)における「EQ発揮に関わる能力」です。少し時間をとって、ご自身のことや社員の方のことを考えてみて頂けますでしょうか?

図表1:EQ発揮に関わる8つの能力

自己認識力 自分の感情や感情状態を自分ではっきりと認識しているか
ストレス共生 怒りや不安、恐れなどネガティブな感情を抑えたり、調整しているか
気力創出力 ポジティブな感情を自ら作り出し、それを活用し維持しているか
自己表現力 自分が感じていることや考えていることを、的確に相手に伝えるために自己を表現しているか
アサーション 相手との関係において、自分の考え・意思を主張したり守ったりしているか
対人関係力 人間関係で生じるトラブルに解決策を見出したり、トラブルを未然に防ぐための行動をしているか
対人受容力 相手が何を感じ、何を考えているかを理解し、受け入れているか
共感力 相手の感情を理解し、”我が事”のように主観的に感じとっているか
出所:EQI結果の読み方(提供:アドバンテッジリスクマネジメント社)

いかがでしょう。
これは得意だけどこれは苦手、これはできているけどこれはできてない…そのような凸凹感を感じられないでしょうか。
そうなのです。人には誰しも得手不得手があり、その時の状況に合わせて、このような凸凹をつくることでバランスを取りながら、役割発揮に注力しているのです。今のご自分の役割やお立場では、もっとこうしなきゃ…そんな気持ちが湧いてこないでしょうか?
これがEQ開発のスタートラインです。


何度言っても変わらない部下、何回もパワハラを繰り返してしまう管理職…部下指導で苦労しておられる方は、人を変えることができるのは自分だけ、誰かを変えようとしてもその瞬間だけ、と思われているかも知れません。でも自分で気づけば、気づきさえすれば、人は変わるきっかけがつかめます。そこに働きかけるしかありません 。
多くのビジネスパーソンや企業様から、すぐに結果が欲しい、解決したい、というご相談を頂きますが、多くのやり方を試す前に、まずは自分のこと、今の状況に気づくことが大切です。それによって、自分に適したやり方、今の状況に必要な方法を見つけることができます。遠回りのようで実は最短で問題解決に向かうアプローチなのです。

3.EQ開発のヒント

その次は実践です。EQは、意識して行動することで、年齢や性別に関係なくいつからでも開発していくことが可能です。
ただ注意しておきたいのは、いきなり完璧を求めないことです。千里の道も一歩より。まずは「今できること」から始めましょう。こちらは、先程ご紹介した「EQ発揮に関わる8つの能力」を高めるヒントです(図表2)。

図表2:EQ開発のヒント集

No 8能力 ヒント
1 自己認識力 「今の自分」を感情日記につけてみよう
2 自分の立ち居振る舞いを意識してみよう
3 不安に思っていることを紙に書き出してみよう
4 ストレス共生 6秒待って!イラッとしたら一呼吸してから行動しよう
5 クヨクヨし始めたら、早歩きでウォーキングしてみよう
6 リラクゼーションを心がけよう
7 気力創出力 自分の成功体験を知っている友人と飲みに行こう
8 自分がその気になる「ご褒美リスト」をつくってみよう
9 マイナス面とプラス面を書き出し、マイナス欄を破り捨てよう
10 自己表現力 2割増しのオーバーアクションで話してみよう
11 意識して感情語を会話に組み込もう
12 まずは感想だけでも伝えてみよう
13 アサーション 3秒で決断してみよう
14 あいづちのバリエーションを増やそう
15 「でも」を「では」に変えて話をしよう
16 対人関係力 苦手な人こそ笑顔であいさつ
17 感謝の言葉「ありがとう」を連発しよう
18 初対面の人にはいいとこ探し
19 対人受容力 「聞き上手」を演じてみよう
20 会話中は、相手の手足の動きに注目してみよう
21 自分の言動への相手の反応を確認してから話してみよう
22 共感力 「もし、相手の立場だったら…」と問いかけてみよう
23 会話の場に、「もう一人の自分」を意識してみよう
24 相手の感情をあなたの言葉で言い換えてみよう

いかがでしょう。
え、こんなことで?と思われたかもしれません。そうなのです。ちょっとしたことができず大きな問題に発展したり、些細なことのすれ違いで関係がギクシャクしていくケースがほとんどなのです。
これを、一人ひとりの社員の方が自分のことを省みて自ら実践したら、そのチームはどうなるでしょう?たとえば昨日までぶすっとしていた上司から「ありがとう」と言われたら、部下にとって大きなインパクトがあると思います。
さらに、全メンバーがお互いに励まし合いながら実践したら、組織はどうなるでしょう?困ったときには隣から助けが来て、しんどい時には横から励ましの声が届く…そんな職場の人間関係になったら、社員の健康状態と組織のパフォーマンスは大きく改善されることと思います。

人は感情の動物です。組織はそんな感情の動物が集まった感情のうごめく場であり、単なる箱ではありません。リモートワーク・在宅勤務が進み、職場や自分を客観視する時間が増えている今、この機会を活かして、EQの開発に取り組んでみてはいかがでしょうか。